ただいま日記

洗脳社会〟の手法を「知って。気付いて。」 自分に帰ろう。今に戻ろう。

お江戸でござる 杉浦日向子[監修]___一部転載

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お江戸でござる 杉浦日向子[監修]
/深笛義成[構成](ワニブックス)初版2003年
江戸こぼれ話(壱) 頁72〜74より転載

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相撲・寄席・歌舞伎・浮世絵__
 江戸からは世界的にネームバリューのある日本文化が生まれていますが、
江戸文化の特徴は、そのいずれも庶民が生み出している点です。それらに
親しむために日本を訪れる外国の方も沢山いますが、西欧の文化はオペラにしろ
バレーにしろ、特権階級の貴族を喜ばせるために生まれたものでした。
それが、だんだん下の階級に降りていき、伝播していったのです。
 反面、江戸では下から上に伝わります。庶民から生まれた歌舞伎なども、
奥女中や武士がお忍びで観に行きました。

 江戸は天下泰平の世の中で、内外とも戦争が二世紀半に渡ってありません
でした。西欧は攻めて奪うことによってハイブリッドな文化が生まれていき
ましたが、江戸に略奪戦争はありません。
 江戸の文化は納豆のように中から発酵する熟成文化です。
江戸で最初に整備された五街道も、商人たちが通っていた道が、
だんだんと太くなったものです。
それに対して、西欧に残っている道のほとんどは、
軍隊が通った後にできたもの____
 日本が西欧に対して誇るべきは、
二世紀半の平和の中で独自の文化を育んでいった、その一点につきるでしょう。

 実は江戸では、武士が皆の上に立つ者という意識もありませんでした。
士農工商”という四字熟語が普及したのは、明治の教科書でさかんに
PRされたからです。

 それ以前もそういう言葉はありましたが、庶民は知りません。
士農工商」といったら「え?塩胡椒?」と聞き返すくらいです(笑)。
身分が順位付けられているなんて、全然考えていません。
職人ならば自分の上は「親方」で、その上は「町名主」や「町役人」だと思って
います。自分たちの職業の中でそれぞれの順位付けはありましたが、
職業別のランク付けはありません。横一列の分業感覚なのです。

 江戸には、価値観の同じ仲間がわいわいと一緒に趣味の会をする「連」という
集まりがあります。ここでは、職業、身分、年齢、性別すべておかまいなしです。
武士も町人も一緒に楽しんでいました。
そんな中から、江戸独自の文化が生まれたのです。


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